1.1.3.磁気ディスクとスピンドルモータ

 
図10 磁気ディスクとスピンドルモータ(内部)図11 スピンドルモータ(下部)

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図12 磁気ディスクとスピンドルモータ(構成部品)

磁気ディスクは図13のようにブランク材と呼ばれるアルミニウムやガラスなどの硬質なドーナツ状の円盤に磁性体が塗布され磁性を持つようになった記憶媒体です。別名プラッタとも呼ばれます。

図13 磁気ディスク

磁気ディスクの中心を固定して軸受によって支え、スピンドルモータ(図14)によって5,400rpm (revolutions per minute, 回転/分) から15,000rpmまでの速度で、駒と同じように水平に高速回転します(図15)。

 
図14 スピンドルモータ図15 磁気ディスク(2枚構成)とスピンドル

さらに磁気ディスクにはライナーと呼ばれている潤滑剤が塗布され、磁気ヘッドと磁気ディスクは潤滑剤の膜圧分だけ僅かに浮いただけの距離で接触します(図16)。

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図16 密着した磁気ディスクと磁気ヘッド

このように記録時および再生時に磁気ディスクと磁気ヘッドがほぼ密着していることから、接触型補助記憶装置に分類されます。これに対して、レーザ光の照射で記録および再生を行うCDドライブやDVDドライブなどの光学記憶装置(光学ドライブ)は非接触型補助記憶装置に分類されます。 非接触型と比べて、接触型は記録再生ヘッドと記憶媒体の距離が密着しているため、高密度化できる反面、接触による磨耗で経年劣化が早くなっています。時と共に熱や空気中の化学物質などとの化学変化で磁性体やライナーの物性が変化して保磁力が低下したり、磁気ディスクの剛性が劣化して歪む事で、不良セクタの発生が考えられます。 また接触型であるHDDは、記録再生ヘッドである磁気ヘッドと、記憶媒体である磁気ディスクが衝突すると破損するので、衝突をしないように磁気ディスクは表面が厳密に平坦であり、かつ軸受は磁気ディスクを厳密に水平を保ち、回転により軸ブレがないようにする必要がありますし、ライナーが常に磁気ディスクを完全に被膜していなければなりません。 さらに磁気ディスクに塵や埃が付着しないよう密閉しなければなりませんので、光学ドライブのように記憶媒体を交換することはできません。

近年までスピンドルは玉軸受(ボールベアリング)によって支えられていましたが、玉軸受によって起こる振動は高密度化に伴って無視できないものとなりました。しかし最近流体軸受(Fluid Dynamic Bearing, FDB)が開発され、振動抑制化と静音化に貢献しました。ただし、FDBは環境による劣化に弱く、温度による環境仕様がより狭くなりました。

磁気ディスクの回転によってトラック上の一定幅エリアを1セクタとしてデータの記録/再生を行うので磁気ディスクの外側のトラックほどセクタ量が多く、1トラック当たりのデータ記録量が多くなります。また中心軸から離れるにつれて、速度は高速となります。HDDの開始アドレスは最外周のトラックにあることから、アドレス番地が小さいほどデータの記録/再生が高速になります。そのため、OSのカーネルやその他アクセス頻度の高いデータは小さいアドレス番地に割り当てるとコンピュータの動作が高速になります。また、コンピュータは記録時にアドレス指定のない限り、より小さいアドレス番地に記録されます。


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