機器の障害を事前に予知するため、SCSI(Small Computer System Interface)規格では、初期の規格(SCSI-1)より自己診断機能がありました。しかし、SCSI対応機器はその対応機種の多さ、機能の豊富さから高価であったため、SCSI対応HDDは一般には普及せず、業務用に広く普及しました。
一方、対応機種と機能をマスストレージデバイスに限定したATA(Advanced Technology Attachment)規格は、HDDの低価格化を実現して広く普及しました。しかし初期の規格であるATA-1では自己診断機能がありませんでした。しかし、自己診断機能の必要性が高まり、SFF(Small Form Factors)コミッティーが、1995年にSFF-8035iにて、S.M.A.R.T(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology)を規格化し、その後ATA-3規格からSMART機能が統合されました。
HDDに限らず、全てのSCSI機器が本機能を搭載することができます。しかし、そのために具体的な診断基準が設けられていません。SCSI自己診断機能は、以下の自己診断機能を搭載することができます。
♦ 機器内で動作中の構成部品を常に監視し、障害予測の指標となるパラメータの閾値よりも大きくなった場合に、報告する機能です。 ♦ 監視は製造メーカ独自の基準によって行います。 ♦ MODE SENSE命令のInformational Exeptions Control mode pageのパラメータによって、機器が本機能の対応の有無を確認できます。 ♦ REQUEST SENSE命令によって現在の状態を、LOG SENSE命令によって過去の履歴を確認します。 |
♦ 機器に自己診断テストを実行させる機能です。 ♦ SEND DIAGNOSTIC命令によって、診断開始することができます。 ♦ 診断テストには以下の種類があります
基本的な診断テストを行います。SEND DIAGNOSTIC命令に対応する機器は実装必須です。 短時間に診断を行うことが目的のテストです。2分以内にテストを完了することが規定されています。 製造工場で包括的なテストを簡単に行うことを目的としたテストです。本テストに対応する場合、所要時間の表示が必要です。
診断を最優先で実行します。診断は基本的には中断できません。 他の処理の実行を最優先で診断します。 ♦ 各診断の基準については、製造メーカが独自に基準を設定します。 |
ATAPIを除くATA機器(実質HDDのみ)に搭載することができます。診断基準についてはSCSIの自己診断機能同様製造メーカによる独自規準となっています。S.M.A.R.T.には以下の機能があります。
♦ 機器の状態をオンラインまたはオフラインで報告する機能です。 ♦ オフラインで検査項目を収集する時間は、メーカで独自に規定する必要があります。例えば東芝製HDDの場合は219秒です。 ♦ SMART RETURN STATUS命令によって現在の状態(正常/要調査)を取得することができます。 ♦ SMART READ DATA命令でSMARTの諸状態やAttribute情報などの詳細情報を確認することができます。 |
♦ オフラインで自己テストを実行し自己診断を行う機能です。 ♦ テストには以下のものがあります。
短時間で検査するテストです。テスト時間は製造メーカ独自に規定しますが、2分が一般的です。 精度の高い検査を行うテストです。テスト時間は製造メーカ独自に規定しますが、東芝製HDDでは43分に設定されています。 製造時の検査用途のテストです。テスト時間は製造メーカ独自に規定します。
最優先でテストを実行します。テストが完了するまで他の命令は実行されません。 他の処理を優先でテストを実行します。中止も可能です。 |